『オールオン4の寿命はどれくらい?何年使えるの?』
『オールオン4にしたけど、10年後にも使えているか心配です…』
オールオン4は、歯を全て失った方のインプラント治療方法の一つです。基本的には手術は1日で終わります。また歯科医院によっては術後すぐに固定式の上部構造(歯)を入れる場合もあります。
このような場合には術後すぐに入れ歯なしで食事ができるのが大きな魅力です。しかし、『オールオン4の寿命はあまり長くないのでは?』『10年後には再手術が必要になるのでは?』と将来的な予後についてのご質問をいただく場合がよくあります。
そこでこちらのページでは、兵庫県明石市で数多くのインプラント治療を手がけてきた当院が、オールオン4の寿命がどれくらいなのか、オールオン4を長持ちさせるためのポイントなどについてご説明します。
オールオン4で人工の歯を入れたものの、その寿命が気になるという方や、オールオン4治療を検討中の方は、ぜひこのページをご覧いただき、役立てていただければ幸いです。兵庫県明石市のいぬきデンタルクリニックでは、オールオン4をはじめとした、歯を失った患者様のための治療を行っております。オールオン4治療をお考えの方は、まずは一度当院にご相談ください。
目次
オールオン4とは
オールオン4とは、インプラント体4本で片顎(上顎もしくは下顎)の全ての歯を作る治療です。こちらで説明したインプラント体とはインプラントの根っこの部分、つまり顎の骨に入れるチタンのネジの部分を言います。
基本的にオールオン4では12本の歯を作製することが多く、この12本の歯は全て連結された状態になっています。
通常1本歯を失った場合にインプラント治療を行う際には、1本の歯に対して1本のインプラント体が必要になります。
しかしオールオン4では12本の歯に対して4本のインプラント体しか使用しないため、手術時間・治療費がおさえられるといったメリットがあります。さらに状態によっては最短1日で人工歯を装着できるなど患者様にはメリットがある治療といえます。
オールオン4の寿命はどのくらい?
オールオン4の寿命と言ってもインプラント体が問題なく使えることに対してか、人工歯も含めて問題なく使えるのかにより寿命は変わります。
インプラント体に絞ってお話しすると、オールオン4の治療は通常のインプラント治療と比較して寿命は大きな差はないと言われています。一般的には通常のインプラント治療のインプラント体の寿命は10年経過時で90%位以上だと、様々な論文により報告されています。このため、お口の中では10年以上しっかりと機能することが予測できる治療と言えます。
ただこれはあくまで論文のデータによるもので、実際に治療を受けられた患者様の、お口の中の衛生状態や適切なメンテナンスができているかなどでも予後は変化すると思われます。
万が一オールオン4の支えとなるインプラント体の1本でも使えなくなると、基本的に人工歯を全てやりかえが必要になるというデメリットもあります。
また上部構造(人工歯)に関しては、作製する材料にもよりますが、様々なトラブルが生じる可能性があります。代表的なものとしてはインプラント体と上部構造をつなぐネジの緩み、上部構造の破折などです。これらはどちらも噛み合わせの力が原因であることが多いため、インプラントを入れるだけでなく、上部構造が壊れにくい噛み合わせをトータルで治療計画に組み込む必要性があります。
またオールオン4はインプラント体が1本でも悪くなると全ての治療がやり直しになる必要性がありますが、上部構造も全てが連結されているため上部構造に破折などがあり修理が必要になる場合には全てやり直しが必要になってしまいます。
オールオン4を長持ちさせる方法
オールオン4の寿命は、他のインプラント治療と同様、メンテナンスや患者様のお口の中の状態などによっても左右されます。
一概にどれだけ持つかということは言えませんが、以下のことに気をつけることで、より長持ちさせることができると考えられます。
- ①日頃のセルフケアを徹底する
- ②歯科医院の定期的なメンテナンスを受ける
- ③定期的に噛み合わせを整える
- ④歯ぎしりや食いしばりの対策をする
- ⑤禁煙する
以下でそれぞれご説明します。
①日頃のセルフケアを徹底する
天然の歯を失うほとんど原因が虫歯、歯周病になります。しかし、インプラント治療による人工歯は基本的には虫歯になることはありません。
虫歯は虫歯菌により出される酸により歯が溶けることが原因ですが、インプラントの人工歯はこの酸では溶けることはないので虫歯にはなりません。しかし、インプラントも天然の歯と同様に歯周病にはなりえます。
歯周病は歯槽骨(歯を支える顎の骨)を溶かす病気です。インプラントも天然の歯と同様に歯槽骨にインプラント体が埋まっているため、インプラントの周りに歯周病菌が付着し、インプラントの周りの歯槽骨が溶ける可能性があります。このようにインプラントが歯周病になることを「インプラント歯周炎」と言います。
インプラント歯周炎と通常の歯周病の違いはインプラントと歯槽骨の結合様式と天然の歯と歯槽骨の結合様式の違いによります。
一般的に天然の歯と歯槽骨は歯根膜と呼ばれる強力な靭帯を介して、結合しています。また歯根膜自体に血流があり体の免疫機構が働きます。このため一度歯周病に罹患しても、通常は急速に進行しないことが特徴です。
しかしインプラントと歯槽骨の間には歯根膜と呼ばれる靭帯は存在せず、一度インプラント周囲炎に罹患すると通常の歯周病よりも進行が早いと言われています。
このため、インプラント周囲炎を防ぐために、日ごろよりブラッシングや歯間ブラシなどを使用してインプラント周囲に歯周病原菌の付着をさせないようにする必要性があります。
②歯科医院の定期的なメンテナンスを受ける
私はインプラントを長持ちさせるためには定期的な歯科医院での検診は非常に重要だと考えています。
前述したインプラント周囲炎などのチェックや、口腔内のブラッシングの状態、上部構造の噛み合わせの状態などは患者様がご自身でチェックすることはなかなかできません。
またこれら状態が悪くなると、インプラント周囲炎につながったり、上部構造の破折につながるなどの結果が考えられるため、定期的に口腔内の状態を歯科医院で確認する必要性があります。
一般的にメンテナンスの頻度は、口の中の状態によりますが、3ヶ月〜4ヶ月に1回が一つの目安です。
③定期的に噛み合わせを整える
当院ではインプラント治療の成功と噛み合わせは非常に関係があると考えています。
天然歯は前述した通り、歯槽骨と歯の間に歯根膜と呼ばれる靭帯のような組織があります。この歯根膜があることによりは約0.03㎜ほど動くと言われており、かつ歯根膜には噛んだ感覚を脳に伝える神経もあります。しかしインプラントはインプラント体が直接歯槽骨と結合しているため、ほとんど動かず、噛んだ感触を伝える神経もありません。このため天然の歯と比較すると強く噛み締めても、それを脳で感知することができません。
このため大きな力がインプラントに加わっても患者様ご自身では分からないのです。
万が一大きな噛む力などがインプラントの上部構造に加わると、上部構造の破折や、最悪の場合、インプラント自体が破折することなどもありえます。
またインプラントを入れた当初は適切な噛み合わせが作れていても、人間の歯やインプラントの人工歯は摩耗します。結果として長期で見ると、噛み合わせが噛み合わせがズレてくる可能性があります。このため歯科医院で定期メンテナンスで噛み合わせをチェックする必要性があります。
④歯ぎしりや食いしばりの対策をする
歯ぎしりや食いしばりなどがある場合にはインプラントの上部構造やインプラント体に大きな力が加わります。
基本的には歯軋りや食いしばりは睡眠中に起こるもので、無意識下で起こります。またこれらにより歯に加わる力は70㎏程度にもなると言われています。
先ほども述べたようにインプラントは歯槽骨に直接埋め込まれており、天然の歯とは違い「歯根膜(しこんまく)」と呼ばれる靭帯がありません。歯根膜はあごの骨と歯の間にある靭帯のような組織で、この組織がないインプラントは歯ぎしりや食いしばりによる力を全く逃すことができないと考えられます。
このような大きな力が加わるとインプラント本体や上部構造に大きな力が加わり、インプラントと上部構造のねじのゆるみや破損、最悪の場合にはインプラント自体の破折につながる可能性があります。
歯ぎしりや食いしばりは無意識下の行動なので、自分でおさえるのは難しいといわれています。このためオールオン4など大きなインプラント治療を行った方には当院ではマウスピースが必須と考えています。
⑤禁煙する
たばこは、オールオン4の寿命を縮める大きな要因の1つです。
たばこに含まれるニコチンは毛細血管収縮作用があり、歯肉にある毛細血管を収縮させます。このため歯肉の血流が悪くなり歯肉の治りや免疫機構の働きなどが低下すると言われています。
これは前述したインプラント周囲炎と大きく関係します。
インプラント周囲炎はインプラントの周囲の歯肉が歯周病菌により攻撃されることで悪化しますが、タバコが原因による歯肉の免疫機能および歯肉の治りの低下により、より悪化させる可能性があります。
当院では、インプラント治療を行う方にはできる限りの禁煙をお勧めしております。
オールオン4の寿命を伸ばすためのメンテナンスについて
オールオン4で埋入するインプラントは使用後から10年後に機能している確率が約90%以上という論文のデータがあり、長期にわたり使用できる可能性があります。また患者様の中には20年以上インプラントを使い続けられる方もいますし、場合によっては一生使える可能性もあります。
しかし『10年後に90%以上』ということは、残りの10%以下の人は10年もたなかったことになります。20年以上維持できている人と10年もたない10%以下の人の差は、様々なものが原因としてあると考えられます。
この中でも当院では患者様のセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスがオールオン4を含むインプラントの寿命を大きく左右すると考えています。
具体的には、以下のような点で、メンテナンスが重要になります。
- ①インプラント周囲炎を予防するため
- ②咬合調整をするため
- ③インプララントと上部構造の緩みをチェックするため
- ④骨との結合を確認するため
- ⑤上部構造の破折を確認するため
- ⑥歯石を取り除くため
- ⑦歯磨き方法をチェックしてもらうために
以下でそれぞれご説明します。
①インプラント周囲炎を予防するため
歯科医院による定期的なメンテナンスが必要なのは、オールオン4をインプラント周囲炎から守るためです。
インプラント周囲炎は「インプラントの歯周病」ともいわれ、一般的な歯周病と同じように最終的にはオールオン4を支えている4本のインプラントの周囲の歯槽骨を吸収しインプラントの脱落を招きます。
脱落までいかなくても、インプラント周囲炎に罹患すると、進行を止めることがなかなか難しく、オールオン4の寿命が短くなることが予想されます。
②咬合調整をするため
オールオン4のような全体的な治療では術後の噛み合わせのチェックが必須と言えます。
噛み合わせがズレてしまうと、一部分に咬合力が集中してしまい、様々なトラブルにつながってしまいます。前述した通り、噛み合わせがズレ大きな力がインプラントに加わると上部構造の破折や、最悪の場合、インプラント自体が破折することなどもありえます。
このため定期的なメンテナンスでオールオン4の噛み合わせのチェックが必須になると言えます。
③インプラントと上部構造の緩みをチェックするため
基本的に現在のインプラントはインプラント体(人工歯根)と上部構造(人工歯)に分かれており、この二つをネジで結合していることがほとんどです。
オールオン4で行う治療はこの上部構造がブリッジのようになっており、全て繋がっています。このため、もし一つのインプラントと上部構造のネジが緩んでいても、患者様はなかなか気付けません。
一つのネジの緩みが、上部構造の破損やインプラント本体にダメージを与える可能性があります。
これらのネジの緩みなどは歯科医院で定期的なチェックが必要です。
④骨との結合を確認するため
オールオン4の支えとなるのは4本のインプラントになります。このインプラントは歯槽骨とオッセオインテグレーションと呼ばれる様式でしっかりと結合しています。
しかし、何かしらが原因でこの結合が壊されてしまい、インプラントが緩んでもオールオン4のような全ての人工歯が連結しているような治療では、患者様は気付きにくいです。
このため定期的にレントゲンの撮影などで確認する必要性があります。
⑤破損を確認するため
通常オールオン4では上部構造(人工歯)はジルコニアやチタン合金などの強度が非常に高い材料を使用します。しかしどれだけ強度が強くても、経年劣化や大きな咬合力で破折してしまう場合があります。
多少の破折やチップなどであれば大きな問題にはならない場合もありますが、上部構造の破折が歯肉の下に及ぶような場合には、破折した部位より汚れが入り、インプラント周囲炎の原因などになりかねません。
また、大きく破折してしまった場合には、修理ややりかえが必要になります。大きく破折した場合には患者様でも気づくことはできるのですが、歯茎の下の破折などは歯科医院でレントゲンや細かく診なければ見つけることは非常に困難です。
このため定期的なチェックが必要です。
⑥歯石を取り除くため
基本的にオールオン4などの上部構造で使用するジルコニアなどの材料は清掃性が非常によく表面に歯石などは付きにくいです。
ただ患者様の口腔内の衛生状態や唾液の成分などで稀に歯石が付着してしまう場合があります。
歯石があるとより歯周病原菌がインプラントに付着しやすくなるため、定期的に除去する必要性があります。
⑦歯磨き方法をチェックしてもらうために
当院では患者様のブラッシングはインプラント治療の成功に大きく関わっていると考えています。
特にオールオン4などは上部構造(人工歯)が全て連結しているような治療では、連結部の清掃は非常に難しくなるため、定期的にチェックする必要性があると考えられます。
オールオン4を長持ちさせるための歯科医院の選び方
オールオン4を長持ちさせるためには、メンテナンスなどの対策は必須ですが、歯科医院選びも重要です。
歯科医院選びのポイントを以下にまとめました。
- ①設備が整っているか
- ②高品質なインプラントやかぶせものの素材を使えるか
- ③歯科医院の保証制度を確認
- ④インプラント、オールオン4の治療実績は豊富か
以下で詳しくご説明します。
①設備が整っているか
オールオン4のような大きな治療を行う場合には歯科医院のレントゲン設備は必須だと当院では考えております。特にCTは顎の骨の形態を術前に把握し、どの部位にインプラントを入れれば安全で適切な噛み合わせを作ることができるかといった判断に必須です。
適切な位置にインプラントを埋入することで安全で長持ちする治療が提供できると思われます。
②高品質なインプラントやかぶせものの素材を使えるか
現在ではインプラントのメーカーは世界中にたくさんあります。
しかしこの中でもシェアの少ないメーカーなどは、患者様が引越しした際に扱える歯科医院がない、インプラントメーカー自体が倒産していて器具や材料がないなどの大きなデメリットがあります。
当院では世界3大メーカーのインプラントしか使用していないためこのような心配はないと考えています。
また上部構造(被せ物)にも様々な材料があります。一般的な材料としてはジルコニアやチタン合金などを使用しますが、これらの材料以外では強度の担保が難しいため早期に破折する可能性もあります。
③歯科医院の保証制度を確認
オールオン4などの治療には、歯科医院が保証を用意していることが多々あります。
内容は歯科医院により異なりますが、保証があるということはそれだけ保証が必要になるようなケースが少ないということ、つまり歯科医院として患者様に自信を持って提供できる治療を行っているのだと考えられます。
このため一つの医院選びの参考になると考えられます。
④インプラント、オールオン4の治療実績は豊富か
歯科医院選びの一つの参考として治療例など術前術後の写真があるかは一つの参考になると考えられます。
このためホームページなどで確認することも一つだと思われます。
まとめ:オールオン4の寿命を長持ちさせるポイント
このページでは、オールオン4の寿命がどれくらいなのか、オールオン4を長持ちさせるためのポイントなどについて、当院の方針を基に回答させていただきました。
オールオン4は、最小4本のインプラントで人工歯を支える治療法で、手術は1日で終わり、すぐに固定式の歯が入るのが大きな利点です。一般的なインプラントと同じく、10年後も90%以上の確率で使用できると言われています。しかし、オールオン4の寿命は口腔内の衛生状態やメンテナンスの仕方、生活習慣などで大きく左右されます。
オールオン4を長持ちさせるためには、以下のポイントが重要です。
- 日頃のセルフケアを徹底する
- 歯科医院のメンテナンスを定期的に受ける
- 定期的に噛み合わせを整える
- 歯ぎしりや食いしばりの対策をする
- 禁煙する
また、オールオン4の治療を行う歯科医院選びも重要です。設備が整っているか、高品質な材料を使用しているか、保証制度はあるか、治療実績は豊富かなどをチェックするのがおすすめです。
オールオン4は、適切な治療とメンテナンスを続けることで、一生涯使い続けられる可能性があります。当院では歯を失った方のインプラント治療や、抜歯を宣告された方の歯を残すための治療など、さまざまな治療を行っております。歯を失った方でオールオン4による治療をお考えの方は、まずは一度当院にご相談ください。患者様一人ひとりに合った治療計画をご提案いたします。
監修者情報
歯科医師(院長) 井貫 幸一
- 2013年 東北大学歯学部卒業 歯科医師免許取得
- 2022年 いぬきデンタルクリニック 開業
患者さまの生涯にわたりお口の健康を維持し、笑顔あふれる生活をサポートできればと考えております。
お口のことでお悩みの方もそうでない方も是非一度お気軽にご相談ください。