フラップレスインプラントという術式について、聞いたことがあるでしょうか?歯茎を切開せずにインプラントを埋入する術式で、患者様の身体のご負担(痛みや腫れなど)が少ないこと、また歯科医師側にとっても歯肉の切開や縫合、抜歯などの手間が少なくなることから、患者様、歯科医師側ともに大きなメリットがある術式です。
そんなフラップレスインプラントですが、さまざまなメリットがある反面で、当院ではデメリットについても着目しており、フラップレスインプラントを行う際には慎重に適応症例を見極めております。
今後のインプラント治療を検討しているという患者様にも、ぜひフラップレスインプラントのメリットやデメリットを知っていただき、慎重に検討いただきたいという気持ちで、このページを作成するに至りました。
兵庫県明石市のいぬきデンタルクリニックでは、フラップレスインプラントを含むさまざまなインプラント治療や、骨造成や歯肉移植などの付帯手術にも対応しております。痛みと腫れの少ないインプラント治療を行いたい、他院でインプラント治療を断られてしまった、という方はぜひ一度当院のインプラント個別無料相談にお越しください。
フラップレスインプラントとは
フラップレスインプラントは通常、歯肉に切開を加えて行うインプラント手術と異なり、歯肉に切開を行わないインプラント手術の一つです。
フラップレスインプラントの特徴として、痛みや腫れが少なく、抜糸行う通院回数を少なくできるという点が挙げられます。このようなメリットがあるため、フラップレスインプラントを行う歯科医院もあります。
私の知っている医院の中にはインプラント治療のうちフラップレスで行う症例が8割を超えるというところもあるようです。このため、フラップレスインプラントが患者様のニーズに答える治療法の一つだと伺えます。
『フラップを開ける』はどういう意味?
インプラント治療では、歯槽骨という顎の骨にドリルで穴を開け、人工歯根を埋め込みます。通常のインプラント治療ではこの際に、骨を目視するために歯肉を切開します。この歯肉を切開し、開くことを歯科用語で『フラップを開ける』というようにいいます。
つまりフラップレスインプラントとは、歯肉を切開しないインプラントという意味になります。フラップレスインプラントでは、歯肉を切開せずに、歯ぐきにピンホールほどのごくごく小さな穴を開け、その穴からドリルで骨を削り、人工歯根を埋入します。小さな穴を開けるだけなので痛みや出血はほとんどなく、術後の腫れも少なくなり、歯肉の縫合や抜糸などもありません。
ただしフラップレスインプラントの際には骨を目視することができないため、歯科用CTや専用シミュレーションソフトなどが必須となります。また埋入の際にはサージカルガイドと呼ばれる専用の治療装置で位置や角度を確認しながら埋入する必要があります。
フラップレスと通常のインプラント、治療の流れの違い
通常のインプラント治療では歯肉を切開するのに対し、フラップレスインプラントは歯肉の切開をしないため、治療の流れも変わってきます。以下でそれぞれの治療の流れを簡単にご紹介します。
通常のインプラント治療の流れ
- 1.歯肉の切開
- 2.歯槽骨に穴を開ける
- 3.人工歯根の埋入
- 4.歯肉の縫合
- 5.抜糸
- 6.治癒期間
- 7.上部構造を装着
- 8.治療完了
フラップレスインプラントの治療の流れ
- 1.型取り、サージカルガイドの作製
- 2.サージカルガイドを使用して歯肉と歯槽骨に穴を開ける
- 3.人工歯根の埋入
- 4.治癒期間
- 5.上部構造を装着
- 6.治療完了
このようにフラップレスインプラントの場合、歯肉の切開や縫合、抜糸などの手順が不要になるため、患部の痛みや腫れが少なくなり、通院回数も少なくなります。
フラップレスインプラントのメリット・デメリット
フラップレスインプラントの特徴として、メリットをお伝えしてきましたが、フラップレスインプラントにはメリットだけでなくデメリットもあります。またここまでご紹介していない特徴もあるため、一度メリット・デメリットを整理してみましょう。
メリット
フラップレスインプラントのメリットは以下の通りです。
- ①痛みや腫れの少ない治療
- ②心身の負担を軽減できる
- ③歯肉退縮を起こしにくい
- ④通院回数の短縮ができる
①痛みや腫れの少ない治療
通常のインプラント治療の際には歯肉を歯槽骨から剥がす必要があり、これにより痛みや腫れが生じます。対してフラップレスインプラントは歯肉を切開せずに小さな穴を開けて治療するため、歯肉と歯槽骨を剥がすこともなく、歯肉にダメージがほとんどありません。
そのためフラップレスインプラントは術中の出血も少なく、術後の痛みや腫れもほとんどありません。麻酔が切れた後も、痛み止めが必要ない患者様もおられます。
②心身の負担を軽減できる
インプラント治療の際には歯肉を大きく切開することや術後の痛みなどへの恐怖感があるという患者様は多いです。フラップレスインプラントはこういった点を解決することができます。さらに縫合や抜糸などのステップもないため通院回数が少なくなり、心身の負担が軽減されます。
③歯肉退縮を起こしにくい
通常のインプラント治療の際の、歯肉の切開、歯槽骨との剥離、縫合といった処置は、歯肉にダメージを与えて歯肉退縮を起こす原因になります。そのため通常のインプラントの際には歯肉の移植を行ったり、歯肉退縮への対策が必要になります。対してフラップレスインプラントは歯肉へのダメージがほとんどないため、歯肉退縮を起こしにくい手法です。
④通院回数の短縮ができる
フラップレスインプラントは基本的には手術が一日で終了します。さらに縫合を行わないため抜糸のための通院は必要ありません。このような理由で通院回数が少なくなり、さらに身体へのダメージも少ないため、痛みなども軽減されることが多いです。
デメリット
つづいて、フラップレスインプラントのデメリットは以下の通りです。
- ①適用できない場合がある
- ②歯科医院側に高度な設備が必要
- ③歯科医師の経験がより重要になる
- ④途中で切開手術に変わる場合がある
- ⑤通常のインプラントより高額な場合がある
- ⑥歯肉を足す、骨を足すなどの処置を同時に行えない
フラップレスインプラントには確かにたくさんのメリットがありますが、同時にデメリットもございます。必ずデメリットまで確認した上で、治療をご検討ください。
①適用できない場合がある
そもそもフラップレスインプラントが適用できない場合があります。フラップレスインプラントは歯槽骨を目視できないというデメリットがあります。通常インプラント治療を行う場合は歯科用CTを使用して骨の状態を確認しますが、実際に切開してみるとCTのデータと骨の状態が異なる場合があります。また周辺の歯に金属の詰め物などが入っていると、CTがうまく撮れず、骨の状態をしっかりと把握できない場合があります。
また骨が足りない場合は歯肉を切開しなければ、骨造成を行うことができません。
埋入した人工歯根が定着するかどうかは骨の状態に大きく左右されるため、当院では骨を目視できないフラップレスインプラントでの治療は特に慎重に行っております。
②歯科医院側に高度な設備が必要
フラップレスインプラントは歯槽骨を目視できないため、通常のインプラント以上に歯科用CTの役割が大きくなります。歯科用CTは高額な設備のため、全ての歯科医院に備わっているものではなく、そもそもCTがないのでフラップレスインプラントはできないという場合もあります。
またCT以外にも必須となるのがサージカルガイドの作製です。サージカルガイドがないと骨を術中に見ることができないため、インプラント埋入することができないのです。
③歯科医師の経験がより重要になる
フラップレスインプラントは通常のインプラントのように歯肉の切開や縫合を行わないため、簡単な治療のように感じる方も多いのではないでしょうか。実際に治療の手順は少なくなりますが、歯槽骨を目視できず患者様の歯肉の様子やCTのデータで骨の状態を判断しなければいけないため、歯科医師の経験が重要になります。
目視ができず不確定な要素が多いフラップレスインプラントについては、当院はかなり慎重に対応しており、安全にインプラントを埋入できると判断できない限りはフラップレスインプラントでの治療は行いません。
④途中で切開手術に変わる場合がある
フラップレスインプラントでの治療中であっても、実際に歯槽骨にインプラントを埋入するタイミングなどで、歯肉を切開する必要性があると判断する場合もございます。事前のシミュレーションやCTの画像と異なる点が見つかった場合には、フラップレスインプラントでの治療をご希望でも、安全性を優先して通常のインプラントの手術に切り替えます。
⑤通常のインプラントより高額な場合がある
フラップレスインプラントを行う際には、基本的にはサージカルガイドと呼ばれるインプラントの埋入を補助する装置を使用します。この装置は患者様の口腔内のデータに応じてオーダーメイドで制作するため、別途費用がかかることがほとんどです。そのためサージカルガイドを使用する場合、治療費用が高額になります。
ただしサージカルガイドを使用することは費用に関してはデメリットとも捉えられますが、使用するとより高い精度でインプラントを埋入できるため、ご予算に余裕のある方にとってはサージカルガイドの使用はメリットにもなり得ます。
⑥歯肉を足す、骨を足すなどの処置を同時に行えない
インプラント治療で元より歯肉が足りない骨が足りないなどの状況は多々あります。このような場合はインプラント手術と同時に歯肉や骨を足す治療を行う場合があります。しかし、フラップレスインプラントの場合は歯肉に切開を加えないため、歯肉を足す、骨を足すなどの処置を同時に行うことができません。
このため、結果的に治療回数が増えたり、最終的な治療結果が良好なものが得られない場合などがあります。
当院のフラップレスインプラントへの考え方
さてここまでフラップレスインプラントの治療の流れやメリット・デメリットについて解説しました。おそらくこちらをご覧の方は、メリットが多いというように感じているのではないかと思います。
では当院ではフラップレスインプラントについてどう考えているかというと、確かにメリットが非常に大きいとは思うのですが、『歯槽骨を目視できないこと』のリスクも非常に高いと考えています。
歯肉を切開しないため患者様にとって負担の少ない治療なのは確かですが、骨の状態がしっかりとわからないままインプラントを埋入したことで、後々問題が出てしまって患者様に余計な負担がかかってしまうと本末転倒です。こういった点も加味すると、当院では手放しにフラップレスインプラントを推奨はできないと考えています。
とはいえフラップレスインプラントに否定的なわけでは全くありません。骨の状態等の問題がないことがほぼ間違いないと思える際など、フラップレスインプラントが適していると確信できる患者様に対してであれば、ご負担の少ない素晴らしい治療なので、当院でもフラップレスインプラントを採用することはあります。
抜歯即時インプラントをおすすめしております
フラップレスインプラントと同様に患者様のご負担が少ないインプラントの手法として、抜歯即時インプラントというものがあります。
抜歯即時インプラントはその名の通り、抜歯と同時にインプラントの埋入を行う術式です。抜歯した箇所に直接インプラントを埋入するため、歯肉の切開は必要なく、これもある意味ではフラップレスのインプラントです。
また抜歯即時インプラントには、抜歯後の骨の吸収が起きにくいというメリットもあります。抜歯を行った後に特になんの処置もしない場合、歯槽骨の吸収が確実に起こります。骨が吸収する(痩せる)ということは、骨造成などの手術が必要になるので、患者様のご負担が増える要因になります。
抜歯即時インプラントであれば抜歯後すぐから歯槽骨に人工歯根が入るため、骨の吸収を抑えることができ、患者様のご負担の軽減に繋がります。またこの手法であれば、抜歯した際に歯槽骨を目視することができ、さらに歯肉の切開もほとんど必要ないため、リスクが少なくかつ患者様のご負担も少ない治療を実現できます。
インプラント治療をご検討中の方は、抜歯を行う前に、当院や抜歯即時インプラントに対応できる歯科医院にご相談いただくことをお勧めします。
まとめ:症例に応じて適した治療法は変わります
このページではフラップレスインプラントについて解説しました。
フラップレスインプラントはメリットの非常に大きなインプラント治療ですが、当院では歯槽骨を目視できないことのリスクを重視しており、適応症例は慎重に選んでおります。
フラップレスインプラント、通常のインプラント治療、抜歯即時インプラント、それぞれに適した症例があります。そして歯科医師の仕事は、患者様にとって最適な治療法を慎重に検討してご提案することだと思っています。
当院にご相談いただければ、患者様の口腔内の状態やご希望など全てを加味した上で、患者様にとってリスクが低く負担も少ない治療をご提案させていただきます。
兵庫県明石市のいぬきデンタルクリニックでは、フラップレスインプラントを含むさまざまなインプラント治療や、骨造成や歯肉移植などの付帯手術にも対応しております。痛みと腫れの少ないインプラント治療を行いたい、他院でインプラント治療を断られてしまった、という方はぜひ一度当院のインプラント個別無料相談にお越しください。
監修者情報
歯科医師(院長) 井貫 幸一
- 2013年 東北大学歯学部卒業 歯科医師免許取得
- 2022年 いぬきデンタルクリニック 開業
患者さまの生涯にわたりお口の健康を維持し、笑顔あふれる生活をサポートできればと考えております。
お口のことでお悩みの方もそうでない方も是非一度お気軽にご相談ください。