『インプラントは長持ちするって本当ですか?』
『インプラントは最長で何年くらい持つの?』
『長持ちさせる秘訣や、インプラントをダメにしないために気をつけるべきことを知りたい』
インプラント治療は、歯を失った際の治療のなかでも、よく噛めることや見た目の自然さから、多くのメリットがある治療法です。しかし、実際にどれくらいの期間長持ちするか、つまり「インプラントの寿命」についてのご質問をよく伺います。
入れ歯やブリッジと比較して、インプラントは治療にかかる期間が比較的に長く費用も高額になる傾向にあります。期間と費用をかけたインプラント治療が、どれくらいの年数維持できるのか、心配されるのは当然かと思います。
そこでこのページでは、兵庫県明石市で数多くのインプラント治療を手掛けてきた当院が、インプラントの寿命や入れ歯・ブリッジとの比較、インプラントの寿命が短くなる原因から長持ちさせるための秘訣までご説明します。
兵庫県明石市のいぬきデンタルクリニックでは、当院と患者様が一丸となってインプラントをより長持ちさせられるような治療に取り組んでおります。インプラントをより長く健康的に使い続けるための配慮のある治療を受けたいという方は、ぜひ一度当院のインプラント個別無料相談にお越しください。
インプラントの寿命について
インプラントは入れ歯やブリッジと比較して、金具が見えたりすることはなく審美性に優れ、大きな噛む力を支えることができるため、硬い物でもしっかりと噛むことができます。また隣の歯を傷つけることなく治療を行うことができます。このため、歯を失った場合に非常にメリットの高い治療です。しかし、一般的に入れ歯やブリッジよりも治療にかかる期間が長く、費用も高額になる場合があるというデメリットがあります。
このため、インプラント治療は患者様にとって非常にハードルが高い治療であり、また他の治療と比較すると簡単に再治療が行えないというデメリットもあります。そのため患者様がインプラント治療を行う際には、「何年くらい持つのか」ということを気にされる方が多いのかと思います。
インプラントの平均寿命・平均残存率について
そもそもインプラントはどうなった時に「寿命を迎えた」と言われるのでしょうか。
基本的にインプラントは、3つのパーツに分かれています。
- ①フィクスチャー(インプラント体などとも呼ばれる人工歯根の部分。)
- ②上部構造(インプラントの被せ物の部分)
- ③アバットメント(フィクスチャーと上部構造を繋ぐ連結部)
インプラントは、この中のフィクスチャー(人工歯根)と歯槽骨(顎の骨)が結合することで、強力な固定を得ています。基本的にインプラント自体の寿命が尽きるのは、このフィクスチャーが顎の骨より脱落した場合を指すことが多いです。
これは上部構造やアバットメントが壊れた場合には、やり替えがきくことが多いためです。特に上部構造の破折に関しては上部構造のみ修理することで対応できる場合が多いです。
一般的にインプラントの寿命は、20年ほどだと言われております。これは様々な論文で10年生存率が90%を超える報告のものが多いためです。たとえば以下の論文では、10 年生存率は96.4%という報告がされています。
参考論文:Long-term (10-year) dental implant survival: A systematic review and sensitivity meta-analysis
ただし、インプラントの寿命は「必ず10年近く持つ」というものではありません。メンテナンス不足をはじめとしたさまざまな原因により、寿命が短くなってしまうこともあり得ます。
逆も然りで、日々丁寧なブラッシングやメンテナンスを行うことで通常より長期間インプラントを使用することも可能です。20年以上の予後を調べたような論文があまりないため、確実なことは言えませんが、しっかりメンテナンスできていれば、20年、30年とインプラントを使い続けられる可能性もあります。
世界初のチタン製インプラントは40年以上使われました
現在の主流である、チタンを素材としたインプラントが世界で初めて臨床で適用されたのは、1965年のことです。この際に埋入されたインプラントは、患者様が亡くなるまで40年以上、問題なく機能し続けたことが知られています。
1つの事例だけをもってインプラントは40年以上使用できるとは言えませんが、実際に40年以上も機能し続けたことは事実です。現在インプラントの研究は1965年よりも進歩し、インプラントの表面性状(加工)の向上や治療技術も確立され、インプラント治療を適切に行なった場合には非常に長く使用し続けられると考えられます。
ブリッジや入れ歯の平均寿命との比較
歯を失った際、インプラント以外の治療の選択肢としては、入れ歯とブリッジが一般的です。
入れ歯の寿命はおよそ3年〜5年程度、ブリッジの寿命はおよそ7年〜8年程度だと言われています。再治療が必要になった際には、ブリッジは再製、入れ歯は再製もしくは修理になります。実際にブリッジの生存率を日本で調べた論文もあります。こちらの論文によると金属製のブリッジの10年後の予後良好なものは、わずか31.9%であったと報告されています。
参考論文:臼歯部修復物の生存期間に関連する要因
これを聞くと簡単に再治療が行えると思いますが、入れ歯・ブリッジは補綴装置そのものの破損が原因で寿命がきてしまう場合以外に、装置の固定源としている歯が悪くなってしまい修理や作り直しが必要になる場合があります。このような場合、最悪のケースでは支台となる歯の抜歯が必要になる場合もあります。
インプラントの寿命が10年〜15年程度、10年生存率は95%以上ということを考えれば、寿命という点でインプラントの優位性が非常に高いことがご理解いただけるかと思います。
インプラントの寿命が短くなりやすい5つのケース
インプラントの寿命は20年程度と言われていますが、さまざまな要因によって、それよりも早い年数でインプラントの寿命を迎えてしまうことがあります。
ここではインプラントの寿命が短くなりやすい5つのケースについてご紹介します。
- ①重度の歯周病に罹患しているケース
- ②噛み合わせが悪いケース
- ③インプラント埋入の際に骨造成が必要なケース
- ④歯茎(角化歯肉)が足りないケース
- ⑤全身的にインプラントを行うにあたりリスクの高いケース
以下でそれぞれのケースについてご説明します。
①重度の歯周病に罹患しているケース
インプラント治療や抜歯を行う以前より、重度の歯周病に罹患している方は、インプラントの寿命が短くなる可能性があります。
インプラントが通常よりも早く寿命を迎える主な原因として、インプラント周囲炎というものがあります。簡単にいうとインプラントの歯周病のような症状で、発症すると歯茎から膿が出たり出血するほか、歯槽骨が溶けてインプラントがグラグラし始め、最後にはインプラントが脱落してしまいます。
虫歯で歯を失った方や、外傷により歯を失った方と比べ、歯周病が原因で歯を失った方は歯周病原菌が多い傾向があります。そのためインプラント治療後にインプラント周囲炎を発症する可能性が高くなり、インプラントの寿命が短くなってしまう可能性があります。
②歯並びや噛み合わせが悪いケース
歯並びや噛み合わせが悪い患者様も、インプラントの寿命に影響するケースに該当します。
理由としては大きく2点あり、1点目は上述したインプラント周囲炎のリスクが高くなる点が挙げられます。歯並びが悪い方、特にインプラントを埋入する周辺の歯並びに問題がある方は、歯ブラシなどのセルフケアが行いにくく、長期的にみるとインプラント周囲炎のリスクが高まります。
2点目の理由としては、噛み合わせが悪いとインプラントに過剰な負荷がかかってしまう可能性があることが挙げられます。噛み合わせが悪い患者様は、インプラントの噛み合わせの調整も難しくなるため、インプラントに過剰な負荷がかかり、人工歯根の脱落や、人工歯の破損が起きる可能性が高くなると言われています。
③インプラント埋入の際に骨造成が必要なケース
骨造成が必要な場合も、インプラントの寿命を短くする可能性があります。
骨造成は元々顎の骨の量が少ない方や、顎の骨が薄い方や、歯周病等の影響で顎の骨が痩せてしまっている方など、インプラントを埋入するのに必要な骨量が確保できない場合に行い、骨増生するための治療です。
骨造成の治療そのものは、そのままの状態ではインプラント治療を行えない方には必須の治療ですが、やはり骨造成をせずにインプラント治療を行える場合と比較するとインプラントの寿命が短くなるという報告もあります。
論文によってさまざまなデータがありますが、厚生労働省の提示する歯科インプラント治療のためのQ&Aを参考にすると、部分および全部欠損症例における 10~15 年の累積生存率は上顎で約 90%程度、下顎で 94%程度に対し、抜歯即時埋入や骨移植を伴った埋入では若干生存率が下がり87%~92%程度とされています。
参考:歯科インプラント治療のための Q&A
④歯茎(角化歯肉)が足りないケース
角化歯肉と呼ばれる硬い歯茎の幅が少ない場合も、インプラントの寿命が短くなると報告されています。
安定してインプラントを維持するためには、角化歯肉の幅が2mm以上必要だとされています。角化歯肉の幅が少ないと、ブラッシングの際に柔らかな粘膜に歯ブラシが当たるため、痛みが生じやすく十分なブラッシングが行えなくなります。
結果としてインプラント周囲炎に罹患するリスクが上昇し、インプラントの寿命が短くなる傾向にあります。
⑤全身的にインプラントを行うにあたりリスクの高いケース
一般的に全身的な問題でインプラント治療に対してリスクが高い場合があります。
例えば喫煙者や糖尿病患者では、インプラントの術後の予後が明らかに悪いと言われています。
インプラントの寿命を長持ちさせる7つの秘訣
インプラントの寿命が短くなりやすいケースについてご紹介しましたが、上記のようなケースに該当するような方でも、インプラントの寿命をより長くするためのさまざまな取り組みがあります。
患者様側で行える取り組み、歯科医院が行う取り組み、それぞれあるので以下でご紹介します。
- ①定期的なメンテナンスに必ず通う
- ②セルフケアを徹底する
- ③禁煙・減煙に取り組む
- ④磨きやすい位置への埋入・磨きやすい形態の被せ物
- ⑤歯列全体の噛み合わせを考慮した治療
- ⑥歯肉の移植を行う
- ⑦抜歯直後にソケットプリザベーションを行う
①〜③までは患者様側で行える取り組み、④〜⑦までが歯科医院が行う取り組みです。以下でより詳しく解説しますが、歯科医院側で行う取り組みついても患者様が知っておくことで、歯科医院選びの重要な基準になるため、インプラント治療を検討されている方は必ずお目通しください。
①定期的なメンテナンスに必ず通う
インプラントの寿命を伸ばすために非常に重要なのが、定期的な歯科医院でのメンテナンスに必ず通うことです。
定期的なメンテナンスを受けることにより、インプラント周囲炎や噛み合わせなど、さまざまなトラブルを予防することができます。特にインプラント周囲炎については、インプラント周囲粘膜炎という前段階がありますが、自覚症状がほとんどなく患者様ご自身で気づくことがとても難しい症状です。定期的なメンテナンスを受けることで、初期症状の段階で治療を受けることができ、インプラント周囲炎にまで進行する前に対処できる可能性が高まります。
定期的なメンテナンスを受けることで、インプラント周囲炎を含む諸問題を迅速に解決し、インプラントをより長く健康的に使い続けることが可能になります。
②セルフケアを徹底する
インプラントを長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスに通うことはもちろん、患者様がご自身で行うセルフケアも重要になります。
毎日のブラッシングは当然として、デンタルフロスや歯間ブラシを使用し、なるべく口腔内の衛生環境を適切に保つことが、インプラント周囲炎の予防、ひいてはインプラントを長持ちさせるためには大切です。
③禁煙・減煙に取り組む
喫煙習慣のある方は、お口の中で細菌が繁殖しやすく、歯周病になりやすいことがわかっています。インプラント周囲炎も同様で、やはり喫煙をされる方はリスクが高まります。
理想としては禁煙、難しい場合でもできる限り減煙していただくことで、インプラント周囲炎のリスクを減らし、インプラントをより長く健康的に使い続けることが可能です。
④磨きやすい位置への埋入・磨きやすい形態の被せ物
ここからは歯科医院が行うべきインプラントを長持ちさせるための取り組みになります。まず第一に、インプラント周辺を患者様がセルフケアしやすいように、磨きやすい位置への埋入、磨きやすい形態の被せ物の製作が重要です。
患者様ご自身が意識的にお口のセルフケアに取り組んでいても、肝心のインプラントが清掃性の低い形態になっていると、磨き残しが生まれてしまいます。そのため歯科医院側でインプラントの治療計画を作成する際に、清掃性を加味して埋入位置・被せ物の形態を決定する必要があります。
患者様側ではコントロールできない部分ではありますが、たとえばインプラント治療前のカウンセリングで歯科医師に話を聞いてみたり、ホームページを見て埋入位置・被せ物の形態について気を遣っているような記載を探してみることをおすすめします。
⑤歯列全体の噛み合わせを考慮した治療
インプラントをより長く使用するためには、噛み合わせの調整も非常に重要です。
インプラントは顎の骨との結合により天然の歯とほぼ同等の力で噛むことができるため、インプラントにかかる力も必然的に大きくなります。噛み合わせの調整がうまく行われず、インプラントに過剰な負荷がかかると、人工歯根の脱落や、人工歯の破損が起きる可能性があります。
歯列全体の噛み合わせの調整まで含めた包括的な治療を行える歯科医師のもとで治療を受けることで、こういった事態を防ぐことが可能です。また噛み合わせは日々少しずつ変化するため、噛み合わせに違和感を感じた際には、すぐに歯科医師に相談することも重要です。
⑥歯肉の移植を行う
歯茎(角化歯肉)が足りないケースでは、インプラントの寿命が短くなりやすいことをご紹介しましたが、こういった場合には歯肉の移植などの治療で角化歯肉の厚みを増大させることができます。
ただし歯肉の移植治療は非常に難易度が高く、インプラント治療を行う歯科医院でも、歯肉移植には対応していない場合があります。また歯肉移植に対応していない医院では、そもそも歯肉が不足している場合に治療を受けられなかったり、歯肉が足りない状態でも無理に治療を進めてしまうケースもあるようです。
こういった事態を防ぎ、インプラントを長持ちさせるためには、歯肉移植に対応している歯科医院で治療を受けることが良いかと思います。もちろん当院でも歯肉移植に対応しており、歯肉弁根尖側移動術、遊離歯肉移植術、結合組織移植術など、症例に応じてさまざまな術式を行うことが可能です。
⑦抜歯直後にソケットプリザベーションを行う
骨造成が必要なケースではインプラントの寿命が短くなりやすいことをご紹介しました。当院では骨造成を回避するために有効な、ソケットプリザベーション(抜歯窩温存療法)という治療をおすすめしております。
ソケットプリザベーションとは、抜歯と同時に抜歯窩(抜歯した穴)に人工の骨を足すことで、少しでも骨が吸収しにくくなるような治療です。抜歯を行うと骨が吸収し、場合によっては骨量が50%程度、幅も7mmほど減少してしまうことが知られています。ソケットプリザベーションを行うことで、抜歯後に時間が経ってもインプラントを埋入するのに十分な骨の量を確保しやすくなり、骨造成を行う必要がなくなることも多いです。
当院では、インプラント治療を前提として悪くなった歯を抜歯する場合は、必ずソケットプリザベーションをご提案しております。骨の減少を防ぎ、安定してインプラントを埋入できるようになるため、結果的にインプラントの寿命を伸ばすことにも寄与する治療だと考えております。
まとめ:医院と患者様、双方の努力が長持ちの秘訣です
このページではインプラントの寿命や入れ歯・ブリッジとの比較、インプラントの寿命が短くなる原因から長持ちさせるための秘訣についてご紹介しました。
インプラントの寿命は一般的に10年〜15年ほどと言われていますが、中には10年未満でインプラントが寿命を迎えてしまうケースも、20年、30年と使用し続けられるケースもあります。
インプラントの寿命が短くなってしまう原因はさまざまですが、適切な対処を行うことでこういった原因を取り除き、より長くインプラントを使い続けることが可能です。
インプラントを長持ちさせるためには、歯科医院の技術と患者様ご自身の心がけ、どちらも重要です。歯科医院側でどれだけ清掃しやすい形態のインプラントを埋入しても、患者様が日々のケアやメンテナンスのための通院を怠ってしまえば、インプラントは長持ちしません。逆も然りで、患者様の日々の心がけが良くても、歯科医院の知識や技術が不足していれば、やはりインプラントを長く使い続けるのは難しくなるでしょう。
兵庫県明石市のいぬきデンタルクリニックでは、当院と患者様が一丸となってインプラントをより長持ちさせられるような治療に取り組んでおります。インプラントをより長く健康的に使い続けるための配慮のある治療を受けたいという方は、ぜひ一度当院のインプラント個別無料相談にお越しください。
監修者情報
歯科医師(院長) 井貫 幸一
- 2013年 東北大学歯学部卒業 歯科医師免許取得
- 2022年 いぬきデンタルクリニック 開業
患者さまの生涯にわたりお口の健康を維持し、笑顔あふれる生活をサポートできればと考えております。
お口のことでお悩みの方もそうでない方も是非一度お気軽にご相談ください。