こんにちは。いぬきデンタルクリニック院長の井貫です。今回はマウスピース矯正の治療に関してのお話です。
当院の矯正相談にお越しくださる患者様から『インビザラインはどれくらいの矯正期間がかかりますか?』『私の場合は何ヶ月くらいで治療できそうでしょうか?』と、治療にかかる期間についてご質問いただくことが、非常に多いです。
矯正治療は通常の歯の治療と異なり数ヶ月〜数年を要する治療のため、インビザラインの場合はどうなんだろう?と気になる方は多いでしょう。そこで今回は、マウスピース矯正(インビザライン)の平均期間についてお話ししていきます。
また平均期間だけでなく、期間が長引く原因、治療が長期間に及びやすいケース、期間を短縮するためのポイントなどについても、兵庫県明石市で多数の矯正治療を行ういぬきデンタルクリニックの院長の井貫が解説します。
Contents
インビザラインの平均的な治療期間について
早速本題に入りますが、当院で治療を行う場合、 基本的には2〜3年程度の治療期間が必要であることが多いです。
しかし、患者さまによって歯並びの状態も様々で、軽度の叢生(歯が重なっておりガタガタの状態)の方もいれば、重度の叢生(歯が重なっておりガタガタ状態)の方もいらっしゃいます。または受け口の方や、出っ歯の方など患者様によって歯並びが全く異なるので、平均の治療期間をどのぐらいと言い切ることはできません。
また難しい矯正治療の場合には3年〜5年ほど、場合によってはそれ以上かかることもあり得ます。
反対に本当に部分的な矯正治療などで治療が終わるようなケースの場合には、数ヶ月〜1年程度で終わる場合もあります。
このように一概にお口の中の状態や骨格的な問題などを考慮せずには治療期間がどのぐらいで終わるとは言い切れません。
また、インビザラインを使用したマウスピース矯正では以下のようなことを守れない場合は治療期間が延びてしまうことがあります。
インビザラインの治療期間が伸びる原因
インビザラインの治療期間が伸びる原因は、主に以下の4点です。
- ①マウスピース(アライナー)の装着時間を守れていない
- ②マウスピースを正確に装着することができない
- ③予約通りの通院が難しい
- ④リファインメントが必要になった
それぞれ詳しい内容をご説明します。
①マウスピース(アライナー)の装着時間を守れていない
基本的にインビザライン矯正では出来上がってくるマウスピースを『1日のうち20時間以上装着していただく必要性』があります。
ワイヤー矯正は患者様ご自身では取り外すことはできませんが、インビザラインを使用したマウスピース矯正の場合は、マウスピースを患者様ご自身で着脱する必要があります。
このためマウスピースを長時間装着していただけないと、歯が動くスピードが鈍ってしまいます。
結果として、マウスピースの不適合が出てしまいリファイメントが早期に必要になったり、マウスピースを装着しているのに、歯が予定通り動かないといったことが起きてしまいます。
②マウスピースを正確に装着することができない
インビザライン矯正は患者様ご自身でマウスピースを取り外す必要性があるため、このマウスピースを正確に装着できないと、歯は計画通りに動きません。
このため、マウスピース矯正を行っていただいている患者様には『アライナーチューイ』というマウスピースをしっかりと噛んで入れていただくものを使用していただく必要性があります。
マウスピース矯正はワイヤー矯正と比較すると患者様のご負担も少なく画期的な治療法ですが、このように患者様のご協力が必要になります。
③予約通りでの通院が難しい
マウスピース矯正を行なっていただく場合には当院の場合は、通常1〜2ヶ月に1度程度で通院していただいております。
インビザラインの治療中は1~2ヶ月に1回通院し、マウスピースの調整や歯が計画通りに動いているのかのチェックが必要となります。
診療時に歯が計画通りに動いていない場合には、マウスピースの調整を行ったり、装着期間の調整などもご指導させていただいております。
また場合によっては早期にリファイメントを行うなどの必要性がある場合もあります。
このため、『通院間隔が守れない場合には、治療期間が伸びる可能性があります』。
④リファインメントが必要になった
「リファイメント」とは、マウスピース治療を進めていく中で、計画通り動いていない歯の調整を、再度マウスピースを作製し直すことで、修正することです。
リファイメントを行う際には、お口の中を再度、口腔内スキャナーで型取りし、もう一度治療計画を修正するため、この期間中は治療を進行させることができません。
また通常、再度型取りを行なった場合には、新しいマウスピースが出来上がるまでは約1ヶ月程度は必要であるため、これも治療が遅れてしまう一つの原因になっています。
私の経験としては、通常リファイメントは2〜3回程度必要であることが多く(患者様の歯並びによっても増減します)、このリファイメントを行うことで治療期間の延長に繋がることがあります。
ただ、リファイメントは綺麗な歯並びを達成するためには必要不可欠なものなので、最初に出来上がった治療計画より治療期間が伸びることは通常あることだと考えていただくとよいかと思います。
インビザラインの治療期間が長くなりやすいケース
続いて、インビザラインの治療期間が長くなりやすいケースについてもご紹介します。以下のようなケースでは、治療期間が長くなることが多いです。
- ①矯正治療に抜歯が伴うようなケース
- ②過蓋咬合の(噛み合わせが深い)ケース
- ③歯槽骨が硬いケース
- ④インビザライン以外の矯正装置と併用
- ⑤矯正中に虫歯や歯周病になってしまったケース
- ⑥途中で治療計画の変更が余儀なくされた場合
それぞれ詳しい内容をご説明します。
①矯正治療に抜歯が伴うようなケース
インビザラインで行う矯正治療はマウスピースを1〜2週間で1枚づつ交換することで、治療を進めていきます。また1枚で歯が移動する量は約0.2㎜です。
このため歯の移動量が多いケースでは治療期間が伸びる傾向にあります。
1番いい例として抜歯が必要になるような症例です。抜く歯の大きさにもよりますが、抜歯を行うとその分歯を移動させる量が多くなるため、治療期間が長くなる傾向があります。
②過蓋咬合の(噛み合わせが深い)ケース
噛み合わせが深いことを「過蓋咬合」や「ディープバイト」と言います。この過蓋咬合と言われるような噛み合わせは、上の前歯が伸びており、下の前歯が上の前歯に隠れてしまっているような状態です。
このようなケースではワイヤーを使用した矯正治療でも、マウスピースを使用した矯正でも非常に難易度が高い治療と言われています。
ワイヤーを使用した矯正の場合だと、ブラケットと呼ばれるワイヤーを付ける装置が下の前歯に付かず、大変苦労します。過蓋咬合の治療は、マウスピースで矯正するとしてもワイヤー矯正と同様に治療が困難になることが多いです。
これは、過蓋咬合のケースでは前歯を圧下(歯根に押し込む移動)する必要性があり、そもそも圧下を伴う移動は最も行いにくい動きと言われているためです。また過蓋咬合の場合には上顎前歯が舌側に倒れていることが多く、これを再度起こすのにも時間がかかる場合があるからです。
③歯槽骨が硬いケース
歯槽骨とは歯を支える顎の骨のことを言います。この骨は人により硬さが異なります。ただ多くの場合、下顎の奥歯の周りの歯槽骨は硬いことが多いです。
歯槽骨は歯を支える骨であるため、この骨が硬い場合には歯に力をかけても、思ったように歯が動かないことがあります。
このような場合には歯を動かすのに時間がかかったり、追加で外科的な治療が必要になる場合があります。
④インビザライン以外の矯正装置と併用が必要なケース
インビザライン以外の矯正装置を併用する必要があるような場合には、治療期間が長くなる可能性があります。
具体的には、①〜③でお話ししたようなケースは症例にもよりますが、マウスピース以外の装置を併用する必要性があります。
このような場合には、マウスピース以外にワイヤーを部分的に併用したりする必要性があります。
⑤矯正中に虫歯や歯周病になってしまったケース
マウスピース矯正治療が伸びてしまう要因の一つに矯正治療中に虫歯や歯周病に罹患してしまうことが挙げられます。
例えば、矯正期間中に大きな虫歯ができてしまい、型取りなどが必要になった場合には、型取りを行なった歯の形が変わってしまいます。
マウスピース矯正は歯にマウスピースを装着する治療なので、治療中に歯の形が変わってしまうと、マウスピースが合わなくなってしまうのです。マウスピースが合わなくなった場合には、再度作製するための時間が必要となるため、この期間の分だけ治療が長引いてしまうのです。
⑥途中で治療計画の変更が余儀なくされた場合
これはマウスピース矯正だけに言える訳ではなく、通常の矯正治療にも当てはまるのですが、途中で治療計画の変更が余儀なくされる場合というのが、ごくごく稀にあります。
一つの例をあげると、歯がアンキローシスしていた場合などが挙げられます。
アンキローシストは歯と骨がガッチリくっついてしまっているような状態です。一般的にはアンキローシスは強い衝撃などで起こると言われています。
最初の診断で、このアンキローシスが見抜けていればいいのですが、実際に歯を動かないという状況になるまで分からない場合もあります。矯正治療がはじまってから、アンキローシスがあることに気づいた場合には、アンキローシスがある歯は動きません。
このような場合には、この歯を動かないものとして再度治療計画を練り直す必要性があります。治療計画を再度練り直すような場合には、大きく治療が遅れてしまいます。
インビザラインの治療期間を短くするためのポイント
続いて、インビザラインの治療期間が長くなりやすいケースについてもご紹介します。以下のようなケースでは、治療期間が長くなることが多いです。
- ①非抜歯で矯正を行う
- ②マウスピースの装着時間を守る
- ③通院とマウスピースの交換の頻動を守る
それぞれ詳しく話していきます。
①非抜歯で矯正を行う
先ほども述べましたが、抜歯を行うと歯を移動させる量が増えるため、どうしても治療期間が長期に渡る可能性が出てきます。
それに対して、抜歯を行わずに治療を行うことで歯の移動量を減らすことができるため、治療期間が短くなることが多いです。
また、奥歯を大きく移動させるような治療計画を作製した場合には、どうしても治療期間が長くなることが多いです。
②マウスピースの装着時間を守る
マウスピースの装着時間はマウスピース矯正を正しく進めるためにはとても大切です。基本的には1日20時間以上装着する必要性があると言われています。
この装着時間が守られない場合には、マウスピースの交換頻度を長くする必要性が出てしまったり、途中でマウスピースが合わなくなり、再度作製する必要が出ることもあるため、装着時間はとても大切です。
③通院とマウスピースの交換の頻度を守る
マウスピース矯正では、最終的な治療のゴールに向かい、徐々に形の違うマウスピースを定期的に交換していきます。ここでマウスピースの交換頻度が早くなったり、遅くなったりすると、治療期間が伸びる、歯が思い通りに動かないなどの問題が出てきます。
当院では、マウスピースの交換の頻度は1〜2週間の間で交換していただいております。この交換の頻度がズレてしまうと歯が正しく動かなかったり、マウスピースの適合が悪くなる場合があります。このため通院を定期的に行い、歯が計画通り動いており、マウスピースの適合も問題ないかなどをしっかりと確認する必要性があります。
インビザラインの治療後の保定期間について
マウスピース矯正治療終了後、そのまま治療が終わったと思い何もしなければ、動かした歯は治療前の位置に戻ろうとします。このような動きを『歯の後戻り』と言います。
この後戻りを防ぐためには、保定装置(リテーナー)と呼ばれる装置を装着することで防ぐことができます。リテーナーには取り外し式のものもあれば、歯の裏側に貼り付けるタイプのものなど様々なものがあります。これらは患者様の最初の口腔内の状態、最終的な口腔内の状態などにより選択していきます。
保定の期間は、矯正を行う歯科医によりそれぞれ異なります。ただ一般的には最低でも1年以上は装着することが多いです。場合によっては数年〜できるだけ長い期間装着が必要とも言われています。
また装着期間は、患者さんの元々の歯並びや、お口の中の状況によっても後戻りがしやすいか、しにくいかが分かれるので、一概にはこれだけの期間が必要とは言い切れません。
保定期間中にリテーナーを適切に装着しなかった場合には、すぐに後戻りする場合もあるので、歯科医師に指定された期間はしっかりとリテーナーを装着するようにする必要性があります。
当院の部分矯正なら最短6カ月で治療可能です
一般的には矯正治療と言われると2年〜3年はかかると言われています。基本的には多くの場合はこのぐらいは治療期間がかかることがほとんどです。
ただ、奥歯の噛み合わせに大きな異常がないような場合で、前歯の歯並びのみ治すような場合には、治療期間を少なくすることが可能です。
このような場合には、最短6ヶ月程度で治療が終了することが可能です。ただこれはあくまでも前歯の部分矯正のみで治療が可能な場合のみです。実際に部分矯正で治療が可能かは、しっかりと歯科医師の診断が必要です。
まとめ:治療期間は人によって変わるので歯科医院で一度相談してみましょう
ここまでマウスピース矯正で治療が長引きやすいケースやなるべく治療を早く終わらせる方法などを説明しました。
一見するとあまり難しくなさそうな歯並びでも、実際にはすごく難しい矯正治療であったり、逆に難しそうに見える歯並びでも、早く並べることができる場合もあります。
治療期間がどのぐらいかかるかは、本当にお口の中の状態によるので、自分がどのぐらいの治療期間がかかるのか詳しく知りたいという方はまず一度歯科医院で相談されるのが1番だと思います。
監修者情報
歯科医師(院長) 井貫 幸一
- 2013年 東北大学歯学部卒業 歯科医師免許取得
- 2022年 いぬきデンタルクリニック 開業
患者さまの生涯にわたりお口の健康を維持し、笑顔あふれる生活をサポートできればと考えております。
お口のことでお悩みの方もそうでない方も是非一度お気軽にご相談ください。
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